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「手前味噌をつくる会(2年目の冬)」のこと
イベントのチラシ。絵がホラーに見える!と不評。
<玄米で麹をつくってみた>
フードプロセッサーで玄米の表皮に傷をつける
洗米し一晩水に浸けたあと数時間水切りをしてから蒸す
蒸し上がった玄米
温度を40度以下に冷まし、麹菌をふりかけ混ぜる
30〜35度程度で保管する
発酵し発熱を始め、38度を超えたらかき混ぜて放熱させる
何度かかき混ぜる行程を繰り返し、発酵を終えたら乾燥させる
写真はまだ途中の段階
<手前味噌を作る会・1年目の様子>
<手前味噌を作る会・2年目の様子>
こんにちはこんばんは。
「みつ蜜」のホームページ上でエッセイを書くことになりました。
エッセイとはなんぞやというと、”気軽に自分の思ったことを書く散文”というものらしいです。
ここでは、「みつ蜜」が主催または関係したイベントや畑のことなどを書いてみようと思っています。
さて、ただいま京都は冬のどん底。最高気温が4度5度という大変寒い時期なのです。
足下に湯たんぽ、乾燥性の皮膚のかゆみに気を散らしながら先日2月5日に開催しました「手前味噌をつくる会(2年目の冬)」のことをご紹介します。
そもそも、<なぜ味噌を作るのか>ということから始めたいと思います。
それは、遡ること2年前の2015年。
当時僕には悩みがありました。
ほとんど他力でスタートし、ほとんど他力で成り立っていた経営が少し安定してきたので、いいかげん社会のためにできることをしなくちゃいけない。
と、ひとりで焦っていたのです。
経営が安定しているというのは、<生活に困ることなく、遊べるお金もできてきた>くらいのことを言うのだと思うのです。
でも当時の僕にとっては<なんとか生きている>くらいで安定と考えていました。
ここらへんの常識の無さには定評があります。
なんとか生きているのだから、畑を借りている花脊地域の過疎化問題に取り組む時期である。
そう判断し、どうすれば問題を解決できるのか、と勝手に悩むわけです。
花脊地域の人に頼まれたわけでもないのに!
今ふりかえると、どうかしているとしか思えません。
どうかしているくらいじゃないと物事は始まらない。というのは経験上、知ってはいるものの、なんせ話がでかい。
<勝手に地域おこし>なんて、どうかしている人間がひとりでできるわけがありません。
そこで、過疎化問題や農業や地域活性化に興味のある京都大学の学生に集まってもらい、チームを組んで活動を始めました。
呼びかけ人の僕がすでに論理的に破綻しているので、優秀な学生たちはどうすれば<焼き芋屋>と<過疎化問題>を論理的整合性を持った線上に配置できるかを考えてくれました。
「サツマイモを使った<ビール>を地域の特産品にして産業を作り、労働の場を提供できる地域として移住者を募ることで過疎化問題の解決に繋げる。」
すばらしい。
「みつ蜜」と言えばサツマイモ。サツマイモで焼酎だとありきたりなので、昨今の地ビールブームを踏襲した<芋のビール>を特産品にしようと。
こうしてビールについての研究が始まり、毎週集まって議論が交わされました。
僕は醸造過程のテクニカルな話についていけず、ウーパールーパーってなんやったかな。とか考えていました。
でも思えば、この時に勉強しているフリをしながら聞いていた<発酵>のことが2年後の<麹作り>に繋がっていくのです。
このホームページのプロフィールを既に読んで下さった方はご存知かもしれません。
あそこで少し触れましたが、結果としてこのビール事業は失敗に終りました。
その理由をざっと述べると
・そんなに芋を使わない(基本は麦なんですやはり)
・そんなに芋の風味がでない(芋を使っていると言われれば芋かな。。。くらい)
・資本金が足りない
でした。単純に事業として取り組むのであれば、挑戦できたかもしれません。主に資本の問題なので。
けれど地域活性化という点では雇用もあまり生まない、農産物としてのサツマイモの需要もあまり見込めない。
こうして一本2000円もする地ビールを完成させてしまった僕は、まあまあ途方にくれました。
しかし。
数日後にはビールのことはすっかり忘れてしまいました。
こうでないと経営なんかできません。
ビールについて学ぶ中で学生に教わった<発酵>に関する知識を利用して、ビールとはまた別の加工品にトライすることに切り替えました。サツマイモの蜜です。
ただし、今回は急がず、じっくり、いきなり大きな目標をかかげず進めています。
以上、<蜜芋ビール>のお話でした。
いや違う、手前味噌を作る会のお話でした。まいった。
途中で晩ご飯を食べて散歩してまったりしてしまい。
今、読み返してみると数時間前の僕はどのようにしてビールと味噌を繋げようとしていたのかわからなくなってしまいました。
再度構成し直してみる。
味噌の材料である麹作りの時に、ビール作りで発酵を勉強していたのでトライするハードルが低かった。
そこから菌という目に見えないものを考えるに至り、目の前の生活を考えた。
と、繋げるしかないように思います。これでいこう。
と思ったけど、しかしなんか違う。
味噌を作ろうと思ったのは、発酵よりも先に、<場>を作りたかったからじゃなかっただろうか。
そうだ、先にこっちから話を進めるべきだった。
でももう遅い。始めから書き直すのはとても辛い。そろそろお風呂に入りたい。なんといっても本日の京都の最高気温は4度です。寒かった。焼き芋は寒いと売れる。寒すぎると人通りが絶えるので売りたくても対象がいない。
そうすると身も心も寒い。だけど今日は寒い中、ご来店ありがとうございました。
それはそうと。
このままでいいじゃないか、書き進めよう!
そうだそうだ。ドンレッミーダウン
ということで話は前後しますが、昨年の第一回目の「手前味噌を作る会」を企画したきっかけを書いてみます。
「みつ蜜 坤高町店(こんたかちょうてん)」の近所にある「西陣ほんやら洞」のマスターと話していたときのこと。
話題はコミュニケーションスキルについてだったと思います。
マスターのお母さんは冬には、近所のお母さんたちと共同で手前味噌を作っていた。一人では準備が大変な作業も、みんなでやれば楽しくできる。そういう人間関係を維持するために、田舎の人はなかなかスキルフルであった。
そういうお話でした。
僕は<自分で食べるものは自分で作る>社会の仕組みを作りたいということからスタートして、焼き芋屋を始めました。
なので、マスターの話の中の、<場>を通して自分達の味噌を共同で作るというアイデアをとても素晴らしく思ったのです。
第一回目のテーマは、本末転倒かもしれませんが、味噌作りという作業を利用して<人との交流空間を作る>ことでした。なんかややこしなってきた。
でもこのテーマは、今後書こうと思っている、正月にアトリエパッチワークで行った<餅つきの会>にも繋がって行きます。<餅つきの会>のときは<場>が人との交流を通過して<神事>へと昇華していくことになるのですが、このさらにややこしい話はまた次の機会に。
話戻って。
第一回目の味噌作りの感想。
栄養がある!とかトラディッショナル!とか日本人のアイデンティティー!というワードで興味を持ったくらいでは、見えて来ない食文化の背景に触れられた気がしました。
また、出来上がりの味噌を味わうことで市販品と比べることができます。単純に味の比較。やはり作ったのは美味しいです。
そして<場>についての感想。
特に大豆を潰す作業は時間がかかる作業だったので、みんなでわいわい話ながらやることの効果が絶大でした。
これが味噌作りではなく、お菓子作りだったとしても代替可能だろうかとふと考えました。
どうもそれでは駄目なような気がする。味噌だからよかったけれど、ジェラートでは駄目。
最初に思い描いた<場>が、マスターのお母さんの田舎の中に存在していたからかもしれません。
田舎への憧憬、その景色に浮かぶ食文化への憧憬。(実際にはフレンチ食べてるかもしれないけれど)
なので代替案としては、一日で作業を完結させられる餅つきや、食ではないですが正月のしめ縄飾り作りなんかがいいかなと思います。
というわけで続きましては。
ようやく今年のお話、「手前味噌を作る会(2年目の冬)」です!
味噌を作るのに必要な材料は、大豆・麹(米/麦)・塩です。
前回は材料全て、もらうか購入したものでした。
今回、大豆は「みつ蜜 坤高町店」の向かいにある豆腐屋「豆徳屋」さんに譲ってもらいました。塩も近所で買ってきたものでした。
ただ、麹は作ってみることにしました。
麹は普通は白米で作るようですが、手元に玄米があったので玄米麹にチャレンジしました。
1)玄米だと麹菌が付着しにくいので、フードプロセッサーで玄米の表皮に傷をつけます。
2)洗米し、一晩水に浸けます。
3)数時間水切りをした玄米を蒸します。
4)蒸し上がった玄米を広げて、温度が40度以下になるまで冷まし、麹菌をふりかけます。
5)手早く麹菌を混ぜて、30〜35度程度の温度で玄米を保管します。
6)玄米が発酵し、発熱を始め、38度を超えたら玄米をかき混ぜ放熱します。
7)6の作業を数回くりかえし、発酵を終えた玄米を乾燥させると完成。
と、ざっくり書きましたが、書いたようには上手くいってません。
温度はだいたいで、放熱のタイミングもだいたいでした。
ので、だいたい完成した、<だいたい麹>のようなものができました。
麹を作っている何日目かの晩に、アトリエパッチワークのA子さんから電話があった。
A子さんの知り合いの料理教室の先生が麹を作っている、その先生の家では様々な発酵食品が作られている、だからきっと良い菌が住み着いているだろう。
そんな話。その時はふーんふーんと聞いていました。
翌日になってなにかがひっかかった。
そわそわし始めるのです。原因不明のそわそわ。
おや?
もしかして昨日、A子さんはすさまじいこと話してなかっただろうか?
電話の会話にあった「良い菌が住み着く」という部分、あれはどういうことだろう?
良い菌は、住み着いたりするわけか?
僕の中で、ヨーグルトのテレビCMくらいにしか存在していなかった<良い菌>という言葉。
そして始めて知ったアイデア、<菌が住み着く>という言葉。
それらが頭の中で繋がったのです。
良い菌が住み着くとはどういうことなんだろう?では悪い菌て何?悪い菌が住み着くこともありえるのか?
おおおおおおおおおおおお!!
「良い菌が住み着くための良い菌をつくる作業としての<麹作り><味噌作り>」
という、なんだかいろいろとひっくりかえるような発想が生まれたのです。
<見えない菌>が<目の前の暮らし>に繋がった瞬間。
さっそくこの天地がひっくり返るアイデアを、今年の味噌作りの会の冒頭で披露しました。
「だから、味噌は自分の暮らしの中で作る必要があるのかもしれない」
これからみんなで味噌を作ろうとしているまさにその時に、それぞれの家でこそ味噌を作るべきなんだと、力説してしまいました。
参加者の一人、日本酒専門店のUさんが酒蔵の話をしてくれました。
ある酒造会社が木造の酒蔵を建替えてコンクリートの建物にした。すると長年そこに暮らしていた菌がいなくなったからか、お酒の味が変わってしまうのだそうです。
ふむふむ。
さらにもう一人別の参加者、店舗内装で大人気の大工のHさんは建築的視点から「菌の住みやすい建築とは」という問題を提起する。
ふむふむ。
共同で食を作る関係性としての<場>から味噌作りを考えるアイデアと
良い菌に住み着いてもらうという発想での味噌作りのアイデア。
この二つを天秤にかける必要はもちろんありません。
どちらも僕にとって興味深いのです。
だけど味噌作りの冒頭、この新鮮な発想を誰かに聞いてもらいたくて仕方がなかったのです。
「なので、来年は手前味噌を作る会はなくなるかもしれません」
味噌はそれぞれの家で作りましょう。そのために今日ここで、味噌作りをマスターして下さい。
良い菌をあなたの暮らしに!
発酵食品作りの本質は、良い菌の定住にあります!
そんなことを口走りました。。。。
最後にこの場をお借りしまして、訂正させていただきたい。
来年も「手前味噌を作る会(3年目の冬)」を開催したいと思っております。
どうぞよろしくお願い致します。
おしまい
美味しい味噌になりますように!