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みつ蜜畑のお話。

ご無沙汰しております。
みつ蜜のホームページにエッセイのページを作成してもらったというのに、味噌のお話しかできておりませんでした。
「手前味噌を作る会」は2月のことだったのですが、仕込んだ味噌がそろそろ出来上がりそうな今は5月の半ばです。
この時期は野菜の苗作りや植え付け、その植え付ける畑の土作りで、焼き芋屋なのに畑に付きっきりなんです。
本日はそんな畑のお話。
サブタイトルは、<なぜ土を耕すんだろう?>です。

出町柳駅から京都バスに揺られること1時間。
貴船や鞍馬といった京都の観光名所を車窓に眺めながら、峠を登って。
てっぺんを越えて下っていくと最初にある集落。
そこが「みつ蜜畑」のある、京都市左京区花脊(はなせ)別所町なのです。

錦市場に最初のお店をスタートさせる前から<自分で作ったサツマイモで焼き芋屋をやりたい>という野望がありました。
方々からコストが見合わないから、そんなことは農家に任せて経営に専念しろと言われます。
だけど「みつ蜜」は、それではどうも駄目なんです。
商品としてのサツマイモを仕入れて焼いて売る。
それだけでは駄目なんです。
因に、当初の野望はアップデートされ、現在は<京都産のサツマイモだけで焼き芋屋をやりたい>に変化しております。(3年以内には、お店で取り扱うサツマイモを全て、京都産にしたいと考えています)

重要なのは「コストが見合う」だとか「供給量がまかなえる」とかいうことではありません。
と書くと青臭いですがお許しください。
これにはもっと別の、<なぜ土を耕すんだろう?>という自問の中に理由があるのです。
なんかややこしくなってきました。
自問の中に理由があるのではなく、「自問」が理由なんですね。
考えたいんです。
食べ物はどうして生まれるのか。
種が発芽して成長し、やがて花を咲かせ実をつける。
その種をなぜ買わないといけないのか。
野菜を作るのに、なぜ肥料を買わないといけないのか。
なぜ殺虫のために農薬を使うのか。
「問い」はいくつもうまれ、生きるということを考えます。
話が逸れました、いつものことですが。
すみません。

みつ蜜畑ではいわゆる有機栽培ということで野菜を作っています。
ここからは突然ですがどんな畑で(履歴)、どんな肥料でどんな種を使って栽培しているのかを書いてみます。


 

■どんな畑で
山の斜面を開墾した棚田を畑にしてます。全ていわゆる耕作放棄地だったところを開墾しています。
開墾3年目や2年目、今年開拓したもの現在開拓中のもの合計4区画で畑をしています。
面積は4区画それぞればらばらで、合計すると1500㎡くらい。わかりにくいので畳でいうと900畳くらい、よけいにわからないですが6畳の部屋が150部屋あるということです。
花脊ではないですが、京町家ゲストハウス「まくや」さんの敷地で「みつ蜜畑まくや裏」という畑も始めました。


 

■どんな肥料で
肥料では何度も失敗しています。
01
まず手を出したのは、ぼかし肥料という古来からある手作り肥料です。
有機物(籾殻くんたん、油かす、米ぬか、発酵促進のための菌=ヨーグルトや納豆)を混ぜて発酵させたら出来上がり。の途中で虫の侵入を許し、地獄に。
02
次にコンポスト(有機物を分解させるための入れ物)をつかった生ゴミ堆肥作り。生ゴミを入れ、米ぬかを入れることをくり返し、発酵させたら出来上がり。の途中でまたしても虫が侵入→地獄。
03
次に山の落ち葉堆肥を拾いあつめて利用する作戦、畑をまかなえる程の落ち葉堆肥を山から運ぶのにトラックと人を雇い、積み込み降ろすという恐ろしく過酷でお金のかかる方法で、一度やったら二度とやりたくないという悲惨な思い出。。。
04
牧場から廃棄物で困っているという馬糞を無料でもらいうけ、畑に撒くというナイスな方法にトライ。
サツマイモがぐんぐん育ち、成功するかと思われた直前、イノシシの侵入でサツマイモが消滅。。効果を知ることなく終了、トラックと人を雇うのでこれも失敗。
05(現在)
草刈りで出た刈り草を堆肥にする作戦を実験中。また、空気に触れさせない、嫌気性のぼかし肥料は成功、使用しています。
それからマルタというところの発酵油カス(菜種はカナダ産を使用)を使っています。
みつ蜜坤高町店の向かいにある豆腐屋「豆徳屋」さんと協力して、豆腐作りででる大豆の廃棄物(国産大豆)を使った堆肥も作っています。
06(これからの目標)
身近にあるもので循環させたいという目標があります。なので、堆肥置き場を広くし、刈り草堆肥や野菜の茎などを堆肥に。
お豆腐屋さんとのコラボ堆肥を確立したい。
土壌のPH調整(酸性土壌をアルカリ性に戻すこと)も、草木を燃やして草木灰を作り、それを使う。
最終的には、堆肥や有機質の肥料などは買わないで自分で作れるようにしたいのです。

 

■どんな種で
自家採取(栽培した野菜から種を取ること)の種を主に使っています。
里芋、落花生、きゅうり、茄子、ゴーヤー、トマト、トウモロコシ、万願寺唐辛子などなど。
サツマイモは今年は鹿児島から苗を買いました。
パープルスイートロード、紅誉、種子島紫、べにはるか、シルクスイート、べにまさり、紅乙女、金時
の8種類の芋を育てます!

今年の提携農家さんはほとんど有機栽培農家さんです。
だけど化成肥料(科学的に生成された肥料)や農薬(苗を食べる虫を殺すものや、除草剤)を使用するいわゆる慣行栽培農家さんとも契約しました。
もちろんお店で販売する時には、有機栽培のものとそうでないものはこれまで通り説明して販売します。

 

有機栽培の立場からと安全が確認されている化成肥料や農薬を使用してもいいという立場からの両方の意見をこれまで聴いてきました。
それぞれが科学的根拠という数値も示されている。
そういう中で、有機栽培がいいのか慣行栽培がいいのかの問いへの僕の答えはこうです。

<わからない>

です。
専門的であまりよくわからない数値に対して、その信憑性を担保しているのは何だと思いますか?
その専門家の肩書きでしょうか?
その見解の支持率でしょうか?
僕が人の話を聞く時、その話者が付き合いのある人であれば、ある程度の判断ができます。
彼(彼女)が言いよどみ、ためらいながら口にする言葉には真実性がある。とか
ストックフレーズのようにすらすら話すときのアイツの話には尾ひれがついているから話半分に聞いておこう。とか。
だけど、個人的なことは何も知らない専門家の専門的数値を判断する場合、その信憑性に対する判断は

<僕にはわからない>

しかないんじゃないかと思うんです。
大勢の人が指示している見解だからとか、この人は著名な作家だからだとか、大学の教授だからとか。
そういうもので判別していいんだろうかと。
大勢の人が指示している見解は、<大勢の人が指示している見解>でしかなく
著名な作家は著名な作品を書いた人であるという判断は可能だけれど、その見識が真理に近いかどうかとはまた別の話です。
だから、僕は有機栽培や自然栽培は地球を傷つけないという見解がほんとうに正しいのか
<わからない>
そして、化成肥料や農薬は身体に影響を及ぼさないというデータについての正否は
<わからない>
んです。

 

だけど、勘違いしてもらうと困るのですが、僕は学問を否定しているのではありません。その反対です。アカデミズムを重んじるならば、肩書きのみで納得するのはダメなんじゃないかと思うんです。
その専門家の示す<今はまだ、わかることができない情報>に近づくために、<僕にはわからない>と言い、研鑽を積みたい。「学び」は、<俺はそんなこと、知っている>という態度からは始まらないんじゃないか。<僕にはわからない>からしか始まらないと思うんです。


そういうわけで。
みつ蜜は、有機栽培農家と慣行栽培農家両方からお芋を買い入れ、何を購入するかはお客さんにお任せしようと思っています。

ここで、サブタイトルの<なぜ土を耕すんだろう?>に立ち戻ります。
どうして僕は有機栽培をするのでしょうか?
その理由は僕自身がこれからも探し続けることなんだろうけれど、でも今の時点で思うのは

・「育てた野菜から採取した種が発芽しない」という奇妙な種の存在に疑問を持っている
・虫が発生して野菜を駄目にすることに対処するのではなく、なぜ虫が発生するのかを研究したい
・畑のある地域(僕の場合は花脊)にあるものを使って野菜を育てたい

ということです。
夏にはこの畑で育った野菜がみつ蜜の店頭にならびます。
<みつ蜜野菜>に魅力があるとすれば、それは鮮度かもしれません。
その日に採れた野菜を毎日店頭に登場させます。
味は。。。きっと美味しいはずです。



と、宣伝のようなエッセイになってしまいましたが、最後に数日前にあった出来事を書いてみようと思います。
あさりを食べていました。
あの、貝のあさりです。
毎日の畑作業に疲れ、ちょうど今年はじめて挑戦しているトウモロコシの自家採取の種の芽出しが成功した時期でした。
<このあさりを土に埋めたらどうなるだろうか>
と考えたのです。
動物と植物のハイブリットな生物になるのだろうか、もうすでに誰かがやっているかもしれない。
いろんな問いが生まれました。
すごい発見になるかもしれないな。

その日は早く寝ました。



おしまい

上の耕作放棄を耕して、下の写真では畝立てをしマルチシートをかけています。

「みつ蜜畑まくや裏」の開墾。豆腐屋「豆徳屋」の若大将(左)と町家ゲストハウス「まくや」の社長

​山から拾ってきた落ち葉堆肥。

牧場の馬糞。

嫌気性の自家製ぼかし肥料。畑の土作りで撒くところ。

芽が出てきた自家採種のトウモロコシ!

空にかかっている黄色いテグスは、カラスよけです。カラス被害は街中も畑も同じです。

循環型農業の模索で、堆肥置き場を増設中。左の迷彩堆肥置き場が初号機。

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